エキタス東海が昨日(2月25日)、名古屋駅東口で「裁量労働制の拡大に反対する緊急街宣」を午後5時半から6時半まで行いました。この街宣での蓑輪明子名城大学助教のスピーチを紹介します。(※蓑輪明子名城大学助教ご本人の了解を得た上での紹介です)
裁量労働制は差別を生み出し、家族から生活を奪う
《蓑輪明子名城大学助教》
裁量労働制で早く帰れる? 働き方が多様化する?
女性だって活躍できる?
名城大学の蓑輪明子です。大学で経済学を教えています。
私は裁量労働制の拡大が差別を生み出し、家族から生活を奪うことをお話ししたいと思います。
私は大学の研究者で、多くの同業者には裁量労働制が適用されています。
裁量労働制とは何時間働いても、決められた労働時間働いたことにして、賃金を支払うというものです。短く働いても長く働いても、基本的に賃金は定額です。でも、こういう仕組みだと、仕事が終わらなくてただ働きが増えるのではないか? 疑問に思うと思います。
疑問はもっともです。だから、労働基準法では、自分たちで労働時間を決められるような、裁量のある仕事の限られた人にだけ、例えば研究者とか新聞記者とかにだけ、裁量労働制が導入できるとされています。
ところが、今、安倍政権が、裁量労働制だと早く帰れる人が増えて残業時間が減る、あるいは働き方が多様化して多様な人たちに活躍の場を提供できる、女性だって活躍できる、だから、裁量労働制が使える職種を拡大するということで、「働き方改革法案」が提出されようとしています。
裁量労働制は女性の活躍の場を減らす
――評価されない女性新聞記者
しかし、私は裁量労働制が女性の活躍を促すどころか、女性の活躍の場を減らすと考えています。
先日、裁量労働制で働く女性の新聞記者にお話を聞く機会がありました。新聞記者は労働時間、関係なし、夜討ち朝駆け当たり前、スクープがとれる人が評価される世界です。そういう働き方ではいけないと、各社で働き方の見直しも進められていますが、今、子育て真っ盛りの、その女性記者がいうには、子育てをしながら希望を持って働ける職場にはほど遠いのが現状だそうです。
記者の大半は子育てを妻に任せて仕事に奔走できる男性たちばかり。それができない、子持ちの女性たちは記者としては不利になり、上司も期待しなくなる。女性の視点の記事もなかなか掲載に採用されない。独身の頃は、上司が戦力として期待してくれていたが、子どもができ、子育てをし始めて、上司は私に見向きもしなくなったという彼女に、私はかける言葉もありませんでした。
裁量労働制は女性の活躍の場を減らす
――出産、子育てが困難な女性研究者
私たち、研究者も同じです。
研究者は裁量労働制になっている職場も多いですが、実際には授業の準備、学内運営の仕事など、仕事に追われ、研究時間は早朝や深夜しかとることはできません。朝夜土日なく、研究ができる人でないと、研究者として生き残ることができない。私もまだ暗がりの朝方に早く起きて研究し、昼間は大学の仕事をして、夕方から深夜まで、睡眠時間を削って、論文を書いている。子どもを産んでる暇もないし、そんなことをしたら競争に負けてしまい、研究者として脱落してしまう。そう思って、子どもを持たずに、研究を続けてきました。子どもを持った院生に「あの人は研究者として終わりだね」と投げかけた、年輩の研究者もいました。
子どもを持っても、母親に子どもを預けっぱなしの女性研究者もいます。実験に追われ、買い物もろくに行けないからと、遠くに住んでいるお母さんが作った、クール宅急便で送られてくる料理で、ようやく子育てができている女性研究者もいる。
だから私自身も同世代の女性たちも、研究者は子どもを産まない女性が本当に多いです。
裁量労働制の拡大は
長時間労働できない人への差別うむ
裁量労働制は子育て中でも働きやすいというイメージがありますが、実際はそうでない。際限のない業務がふってきて、長時間労働が当たり前になる。長時間労働で成果を上げなくてはならない競争が起きる。そうすると、子どもを産んだり、子育てする女性こそ、競争に負け、出世できなくても、差別が合理化されてしまうのです。子育てをする男性、介護をする男性も同じです。
裁量労働制の拡大は、長時間労働できない人に対する差別を生み出します。
政府は女性の活躍を進めたいなら
裁量労働制なくし8時間労働で生活できる社会つくれ
政府が女性の活躍を進めたいのであれば、裁量労働制を拡大するのではなく、裁量労働制をなくして、8時間で家に帰れて、生活ができる社会を現実のものにするために政治と行政が力を果たすべきではないですか?
まして、データ偽造なんかとんでもない。私たち研究者は日々、正確なデータを取るために努力しています。データ偽装で成立する法律など、断じて許すことはできません。
こんな法律は絶対に通さない。みなさん、がんばりましょう。
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